風邪薬を見て思い出す、バイオレンス・ストーカーと付き合っていた頃の話
夫が風邪をひいた。
医者にもらった、その使い掛けの薬のパッケージを見ていて思い出した。
ストーカーと化した腐れ縁男と付き合っていた頃。
わたしの部屋のテーブルに、こんな感じで、使い掛けの薬のパッケージが置いてあったのを見て、その男(以降「腐男」と呼びます)はものすごい不機嫌になった。
「なんでこんなにだらしないの?空いたところは切って捨てなよ」
なんて答えたか忘れたけど、たぶん「え、わたしは気にならないけど、別に良くない?」みたいなことを答えたと思う。
そしたらその腐男は一気に怒り出し、顔を真っ赤にして、クチビルをぶるぶる震わせながら、空いた部分を切りとって捨てた。
その動作も、のすごいオーバーアクションで、切れ目をペコペコ折り返して、ペリって切り取ってポイと捨てれば良いような物を、全身を使ってバリン!と切り取ったかと思うと、ゴミ箱をひっくり返すほどの勢いでバーン!とたたきつけるように捨てた。
わたしが口では「ごめんね」と言いながら、薬箱の中の他の薬の、空いたところがそのままになってるパッケージを探してちぎって捨てながら、またヒステリーか・・・早く収まってくれよと心の中で念じていた。
わたしが他のパッケージをピリっと切り取って捨てている間にも、腐男はバリン!バーン!をこれ見よがしに、何度か繰り返していた。
数日後、薬箱の中はきれいにしていたはずだったが、新しく買ってきた薬をテーブルに出していて、迂闊にもそれの空いたパッケージを捨て忘れていた。・・・見つかった。
見つかった瞬間、ゲンコツが側頭部に飛んできて、殴られたはずみでよろけたところを足蹴にされ、「なんで一度言ってわからないんだよ!」と、今度はサッカーボールを蹴るみたいにドカっとやられた。
ひたすら、早く腐男の怒りが収まりますように・・・とテーブルの下で耐えていた冬の夜の出来事。を、思い出した。
今の夫は、とりあえず、理不尽な暴力をふるうような男でなくてよかった。
そう考えると、案外わたしは今はシアワセなのかもしれない。
あのときの恐怖心のせいか、わたしは今でも、薬の空いた部分はすぐに切って捨てている。